『食・農・森』(食べる・作る・育む)~東大生態調和農学機構から 16年1月11日 第6回の放送は河鰭 実之教授です!
『食・農・森』(食べる・作る・育む)~東大生態調和農学機構から 第6回放送
田無駅から徒歩10分も掛からないところに
30ヘクタール以上の耕地や森林が拡がる東大生態調和農学機構。
ここでは食料生産の効率化だけでなく、
地球環境を改善し私たち人類の生存を持続させるための研究が行われています。
先端研究・教育の施設で、かつ一般開放もされているこの機構について、
現場の先生方や職員の皆さんが登場してお話をしてくださいます。
第6回の放送は、河鰭 実之(かわばた さねゆき)教授をお招きしました!
もともと高校時代は生物をぜんぜん習っていなかった河鰭先生。
物理が好きで植物がどういう風に成長するか、
物理や化学の方向からみたほうが新しくわかるのではないか、
いろいろと考えていたそうです。
東京大学時代にはトマトの研究。
博士課程の教授から
「トマトは水をやらないからあまくなるというのは本当か?」
という問題を与えられた河鰭先生は
一体どういう風になっているのかという問いを5年間も研究されていました!
結論として、水が入る入らない、甘い甘くないというのは
ぜんぜん違う話ということですよ。
葉で沢山光合成して、少ない水で沢山送れるようにすると甘くなるそうです。
ちなみに初めて植物を育てる人はたいてい水をあげすぎてしまうので
失敗するということですよ。
続いては大学院で学ばれていたトルコギキョウのお話し。
トルコギキョウは北アメリカが原産ですが、育種はほとんど日本でやっているそうです。
八重咲きのトルコギキョウがどうして八重咲きになるのか?
と疑問に思った河鰭先生。
おしべが花びらになる。そうすると種が出来ないはずなのに
花屋ではうっている。これはどうして種ができるのだろう?
教科書に載っている事は違うんじゃないかと思って調べはじめました。
苦労の末なんとか、こういう遺伝子になるんじゃないか、
という事を調べだした河鰭先生。
研究の成果は種の出来ない八重咲きを、
種の出来る八重咲きにするときに使えるそうです。
そして去年から東大生態調和農学機構にいらっしゃっている河鰭先生。
東大農場では植物工場の研究をされていらっしゃいます。
きっかけはある大学で教えていたベンチャー企業の学生さんと
一緒に研究したいと思ったことから。
最初はコンテナの中にLEDを沢山並べて栽培しようと思ったのに、
調べていくと勝手に大学のなかに建物を建ててはいけない等、
手続き上いろいろな問題があったそうです。
ではどうするか?仮設物でつくるしかない。
農家の人が農地の中に植物工場を作ろうと思ったときに
申請が必要になって建てられない。
建てるのは工場をもっている人。しかしその人たちには
土地はあっても農業の経験はない。
経験があって植物工場を出来る人が出にくい状況に先生は気がつきます。
植物工場のようなものを普通の農家が立てる、
そういう仕組みをなんとかつくれないかと思って先生は試行錯誤を始めました。
苦労の末完成した、先生がいろいろなベンチャー企業
とのつながりでつくったパイプハウスは
普通の植物工場にくらべ建築費、ランニングコスト、電気代も安く、
性能は高く、断熱性も高い。
立てる建設コストは普通のハウスとほとんどかわらないし、
ランニングコストはむしろ安いほど。
メンテナンスの必要性もなく、環境もコントロールできている。
これを是非普及させたいということです。
植物工場は経営が大変だが、そういうものを解決できる。
普通のハウスと替わらない建設コスト、ランニングコストで植物工場ができると
いろんな人が参入できる。いろんな植物を栽培してみることが出来る。
問題点は今のところ知名度がないくらいで、
これから先すごく希望がもてるものだそうですよ。
日本の農業が厳しい状況にある今。
この技術を使って植物農場を作るコストが安くなるといろんな人が参入できて
とても楽しみな分野だということです。
最後に河鰭先生からメッセージです。
"新しい植物工場でいろんな植物が安く出来るように研究しているので、
近い将来安全で低価格な野菜が並ぶ事を期待しています。
スーパーで植物工場で作ったような、そんなに高くない野菜をみつけたら
その後ろで頑張っている私たちやいろいろな人たちのことを思っていただけたら
ありがたいです"というお話しでした!