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「西東京歯科医師会 先生のいろいろな話」特別編 日本歯科大学教授 田村文誉先生講演会「上手に食べられるかな?~お子さんの口の発達と食べ方~」

「西東京歯科医師会 先生のいろいろな話」特別編 日本歯科大学教授 田村文誉先生講演会「上手に食べられるかな?~お子さんの口の発達と食べ方~」

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「西東京歯科医師会 先生のいろいろな話」 16年10月10日 田村文誉先生講演会 

みなさんは"歯の健康"大事に思って生活していますか?
今回は特別編です。10月10日に行われた"こそだてフェスタ@西東京"で
行われた日本歯科大学教授 田村文誉先生の講演会
「上手に食べられるかな?~お子さんの口の発達と食べ方~」
(主催:西東京市歯科医師会
の音声をpodcastにて配信いたします!
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普段何気なく食事をしていますが、「うちの子ちゃんと食べられているかな?」
「正しく咬んでいるかな?」と思ったことはありませんか?

そう思っていらっしゃるお父様、
お母様に向けた接触えん下のスペシャリスト、
田村先生のお話し、是非お聞きください。

先生のお話ししてくださった内容がヒントになれば、とても嬉しいです!
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田村文誉先生
略歴:日本歯科大学 教授
日本歯科大学口腔リハビリテーション科科長
日本障害者歯科学会理事 等


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【内容の抜粋】
今日は私たちがどうやってものを上手に食べられるよう
になっていくのかをお話しします。
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写っているのは食べて飲み込むときのイメージ。
ベロと筋肉があります。ベロの塊は大きい。
のどの奥はひとつのくだが2つの役目を負っています。
食べ物が間違って肺に行かないように、
のどはしっかり飲み込むときに蓋が倒れて守ってくれます。
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それは口がしっかり閉じていて、ベロがしっかり奥に力をかけられるから。
それは子どもの時から大人になるときにかけて形成されます。
生まれてくればだれでも出来るかというと実はそうではなく、
食べる機能は生まれてから発達して獲得されます。
(これを接触嚥下機能といいます。)
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私たちの栄養を取る機能は2つあります。
1つは赤ちゃんのときのおっぱいを飲む機能(哺乳)。
これは反射的な動きです。

だんだん発達していくと自分の意思で口を動かすことが
出来るようになります。(接触機能といいます)
この2つは動きも目的も大きく違います。
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最初の栄養摂取、哺乳のころの赤ちゃんの口の中は
大人の口の中と大きく違います。まず歯が生えていない。
上あごを開けて見てみると、将来歯が生えてくる土手の内側に
もうひとつふくらみがあります。このふくらみがある事によって、
赤ちゃんののどの奥にはくぼみがあります。
そこに乳首をひっぱりこんで固定をするのです。
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それからさらに固定するために、ほっぺの内側に脂肪のふくらみがあります。
横からはそのふくらみ、そしてのどの奥のくぼみで
しっかり納めて飲む事ができます。

赤ちゃんの飲み方は、あごを開けたまま飲んでいます。
上あごとベロで乳首を押さえて、
ベロを波打たせてミルクを搾り出す、というのみ方をしています。

生まれてから最初の哺乳反射。
その動きはお母さんのお腹の中で練習しているので、
生まれてすぐできるようになります。
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一般的にはこの動きは5、6ヶ月で消えます。
脳が発達して反射をコントロールして隠されていくからです。
この哺乳反射が消えると離乳食をはじめるサインになります。

(ちなみに哺乳反射があると一生懸命スプーンであげようとしても、
ちゅぱちゅぱする反射が出たりしてうまく食べられません。)

反射が消えていくといよいよ離乳食になります。
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それが接触嚥下機能です。(固形物を食べるための機能)
どうやって口を動かしているのでしょうか。
最初は唇を閉じて取り込み、そのあと大きく分けて
3つの動きで食べ物を処理しています。
ヨーグルトみたいなものならそのまま舌で受け取って飲み込む。
お豆腐やプリンみたいなものなら舌で押しつぶす。
繊維質のものならベロで咀嚼して、唾液と混ぜて飲み込みます。
この飲み込む事を嚥下すると言います。
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この3つの大きな動きが離乳食のときの初期、中期、後期で
子どもがそれぞれ学んできている事です。
離乳食のときの短い時期が食べているときの動きの基本になります。
いま離乳食を食べているとしたらこの時期が将来、
子どもがどう食べていくかにつながるのですごく大事な時期なんです。

離乳食がはじまって始めに覚える事は、唇とあごを閉じて飲み込むこと。
1回ごと口を閉じて飲む事を覚えます。
それから唇を閉じてパクっと取り込む事が一番最初におぼえる動きです。
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3ヶ月くらいの赤ちゃんにスプーンで食べ物をあたえると
一生懸命ちゅぱちゅぱします。
哺乳の反射がでてしまって、なかなか上手にたべられません。
この原始反射が消えて、離乳食を覚える事ができると、
1回口で取り込んだら飲み込むまで口を閉じていられます。
まずはこれが出来るようになる、この時期に食べられるのは
ベロの動きが単純なので、いわゆるペースト食。
そのまま飲み込めるものが適しています。
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これが上手になると、閉じた口の中で舌を動かす事が出来るようになります。
そうすると舌の動きに上下の動きがでてきます。
(舌と上あごで押しつぶす事ができるようになる。)
これが離乳中期の動きになります。
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このときの動きのポイントは、あごは上下に動くが、
舌でつぶしているので口の動きは左右対称です。
それはまだ噛んでいるのではなくて、舌でつぶしているのだと見ます。
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目安としては作るときにお父さん、お母さんの指でぷしゅっとつぶせる程度の
固さの食べ物にすると良いです。これがうまくなるといよいよ離乳の後期。
舌やあごが単純だったのが左右、斜めに動く事ができるようになります。
そうすると噛んでいる方に口が寄っていきます。
左右非対称の動き。
これが見られたら今度は噛み潰すような食べ物に変えていきます。
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離乳後期の動きは、噛んでいるほうに口がぎゅっとよっていきます。
口角が左右非対称に引けているかを見る。この動きが出てきたら
後期食に移っていきます。ただしまだ歯は生えていないので、
平均的には生後8,9ヶ月でやっと下の前歯が出てくる時期です。
噛めるからといって繊維の強い食べ物を与えるとうまく食べられません。
(むせたり丸呑みしたりします。)

子どもはこの生え始めた前歯を使っておもちゃを噛んだり、
いろんなものを確認する事をします。
これは自分の手で食べ物をつかんで、口がそれを受け取る経験なので、
危なくない範囲でいろいろ口で遊ぶ事はさせてあげたほうが良いと思います。
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この時期は歯茎ですりつぶせる固さの食べ物、
生野菜とか肉、魚などは
歯茎ではつぶせないのですりつぶしてあげたほうが良いです。
(お母さんの親指、ひとさしゆびで簡単にすりつぶせる
程度の固さにしてあげる事。噛む事が進んできたら、
てづかみでできるような長めのものを与えるのが良い。)

もう1点、この頃に水分を飲むのが上手になります。
今度は口を閉じてごっくんすることを覚えていくので、
さらさらしたものを食べる事は難しくなります。
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ところが下あごを上手に動かす事ができるので、
コップやストローなどを口で押さえるときに、
下あごが安定して受け止める事ができることにつながるので、
この時期になるとコップやストローの使い方は
目安としては上手になるのだと思っていただいて良いです。
ストローなどは、まだ哺乳を併用しているときは
どうしてもベロの使い方ががおっぱい飲みになりやすいので、
あまり急がないほうが良いです。
(ただ、そういったものをくわえたときも、
ベロで巻き込まないで唇でとらえることができていれば
使っても構わないかと思います。そのあたりを見てほしいです。)
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それと前後して、今度は手づかみで色々食べるようになります。
最初は遊んだりすると思いますが、つかみ方などを学ぶ機会になったり、
ある程度の経験になるので、汚いからといってあまり
やらせないと自食が上手にならないかもしれません。

1歳くらいになるとようやく上下の前歯が生えてくるので、
それを使って自分の手でかじり取ることを進めると良いです。

手づかみでかじり取る事によって自分にあった一口の量を覚えていきます。
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その先進んでいくとだいたい3歳くらいで乳歯が20本全て生えそろいます。
この位にならないと繊維のあるものはちゃんと噛めないので、
食事の形態を見ていくときには
歯がどう生えているのかしっかり見ていくことが大事です。
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手の発達にも順番があります。
最初は手のひらで食べ物、道具をつかんでいく。
だんだん親指側の3本が起用になっていくと、
最終的には鉛筆にぎりができるようになります。
これも個人差があるので3歳になっても上手に出来ない子もいます。
小学校に入るくらいまでには、あまり急いで握らせないても良いです。

ただお箸を使わせるタイミングについては
鉛筆にぎりが出来ないうちに使わせても、
いわゆる"握り箸"になってしまうので、まずはスプーン、
フォークを正しく使えるようにしてあげるのが良いでしょう。
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この頃の食事の形態は、
前歯も出てきているので前歯と奥歯の役目がそれぞれ違ってきます。
例えば前歯はものを噛み切る。
(噛みとって今どんなものが口に入ってくるかわかるようになります。)
奥歯は前歯より鈍感です。
その分固いものをグイグイすりつぶす事ができます。

それぞれ使わせていくのが大事です。
歯の生え方によって食べられるものが変わってくるので、
口の中をよく見ることが大事です。
手の機能に合わせて手づかみ、スプーン、フォークなどを使っていく事。
ちょっと大きいものを食べさせて、前歯で取っていくようにしましょう。
なんでも一口にしてしまうと、せっかく感覚がするどい前歯を
使わなくなってしまうので、かじり取っていく事をすると良いと思います。

口の中を見ると3歳くらいで乳歯が生えそろいます。
6歳くらいになると大人の歯に変わります。
そうするとまた食べづらさが出てきます。
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大体の目安が小学校1年生くらいになると、
一番奥の大人の歯がでてきて前歯も生え変わります。
奥歯が増えるので咀嚼力がついてきますが、
前歯が抜けるので齧り取りが下手になります。

(そういう時期に無理やり齧るものを与えると食べるのが
嫌になってしまうかもしれません。)

そのあと、歯が抜け替わっていきます。
大体全部の大人の歯が生えそろうのが小学校6年生から中学生くらい。
そこまでの小学校の間でかなり、奥歯や前歯がガタガタになります。
食べられていたのに食べなくなってしまう。
丸呑みするようになった、食べ物を嫌がることが増えた、
というときはかなり歯の影響もあると思います。
よく見てあげると良いと思います。
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まとめに、子ども達の食べる機能を育てていくには、
まず発達の順番、ごっくん、舌でつぶす、歯茎で噛める。
というものの順番を飛ばしていくのは難しいので、
いまどのくらいのものが食べられるのかを見ながら、
適切な食事を与えるのが良いです。

それから、発達にはかなりの個人差があります。
(歯が生える順番にも個人差があります。)
あとは本人の性格、環境にもよるので何ヶ月になったら、
何歳だからこれが食べられるはず、という判断はせずに、
今のお子さんの状態を見てあげるのが良いと思います。
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美味しく食べるには必要なのは・・・
食べる機能、形態も大事ですが何よりも意欲です。
楽しく美味しく食べてもらう環境を作るのが一番だと思います。
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(2016年10月10日 第6回こそだてフェスタ@西東京にて 
場所:ひばりが丘児童センター)

タグ:日本歯科大学 教授 田村文誉先生 こそだてフェスタ@西東京